編集委員・大村美香
A5ランクの牛肉といえば、最高級の評価で高値で取引される。だが脂肪交雑(サシ)を重視し肉牛の改良を重ねてきた結果、A5ランクが年々増え、今では等級の中で最多になった。行き着くところまで行き着いた霜降り追求ばかりでなく、食味性でも評価しようと、脂肪の質や赤身を重視した新指標を採り入れる動きが盛んになっている。
すき焼きの老舗「人形町今半」(東京都中央区)牛肉購買部の久田茂・副部長は毎週月曜日、東京食肉市場に出向く。同社が展開する飲食店、精肉店などで使う牛肉を仕入れるためだ。
奥深い味でコクがある、黒毛和牛の雌であることは必須条件だが、銘柄や産地は考慮しない。「A5、A4といった格付けも、味の良さとは必ずしも一致しません」
最も重視するのは脂の質だ。キメの細かさ、テリ、クリームかかった色。他に肉の色や、脂と肉のバランス、枝肉の形などをチェック。仕入れは久田さん1人が担当し、年間で約2500頭分を買い付ける。
仕入れた肉は、すべて味見し改めて「極上」「特上」「上」の3段階に区分。社内での使い方を決め、どの店でも牛肉の味にブレがないようにする。
久田さんは12、13年ほど前から、牛肉の味の濃さやコク、香りが薄れているように感じるという。「サシ偏重の改良を続けてきて、見栄えのよいサシが入る血統を重視してきた影響ではないかと思えるのです」
新たな指標として注目されるのは、脂肪の質。記事の後半では、牛肉のおいしさを客観的に測る指標は作れないのか、専門家に聞きました。
■和牛は75%がA5かA4…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル